哲学的な彼女企画選考結果発表(1)
■哲学女子企画の反省点
・規定枚数の100枚上限は不要だったかもしれない。
もともとは、
「30枚の強烈なインパクトのある短編小説」と
「300枚の壮大で重厚な長編小説」を同列に並べて
評価するのは難しい、
ということから、100枚という上限を設けた。
(なお、本企画は「30枚」くらいの短編が「20〜30作品」も
集まれば御の字と思っていたため、
「短編部門」「長編部門」というカテゴリ別に募集するという
考えは出てこなかった。
しかし予想に反して、枚数上限100枚に近い長編を含む
223もの作品が投稿されるという予想外の大成功となったわけだが、)
その結果として、
「100枚ぴったりの作品」や
「100枚を越えてしまったため、
(選考対象外を条件に)2回にわけて投稿した作品」
が多数できてしまった。
たとえば、大賞をとった「金椎響4作品」はすべて枚数上限
ギリギリの100枚の作品である。予想するに、枚数制限がなければ、
もっと自由に必要なエピソードを追加して、さらに完成度の高い
作品に仕上げられたかもしれない。(エピローグとして、
ヒロインの哲デレシーンが追加されたかもしれない!)
つまり、「大賞を取れるほどの質の高い作品であるのに、
実は、その作品の真の実力はまだ明かされていなかった」
という話であり、100枚の上限が創作の障害になっていたとすれば
企画主催者として大変申し訳なく、深く反省している。
また、100枚を越えての投稿であるため選考対象外となってしまったが、
100枚という制限がなければ、大賞をとっていたかもしれない
作品もあった。
「哲学的な彼氏企画 上巻」橙。
「哲学的な彼氏企画 下巻」橙。
本作品は174枚という大作でありながら、
その軽快な掛け合いで、最後まで飽きさせずさくっと読めてしまう
優れた娯楽作品として成立しており、
「気軽によめるライトノベル的な作品」を選考基準の要素として
最も重視するなら、本作品と「僕と狂人」と
「僕と彼女の哲学的おっぱい議論」が大賞になる可能性が高かった。
また、100枚になることを恐れて、泣く泣くエピソードを削って
70枚〜80枚にした作品もあるだろうから、
100枚という枠を取り払ったときの各作者の実力を見てみたいと思った。
■最終選考作品へのコメント
最終選考作品に対し、主催者からの感謝としてコメント。
・「哲学的な魔女、あとオレとか」金椎響
⇒「シャッターボタンを全押しにして」と
どっちを大賞にするか迷った作品。
主人公とヒロインともに、前作とは真逆のキャラでありながら
非常に快活で魅力的でエンタメとして優れた作品であり、
「その気になればこんなのも書けるんですよ」
と才能を見せてつけてくれた。
三作目「She said to me, “GODSPEED”.」
は、正直あんまり面白くなかったが、
四作目「死の季節」は、独特のダウナーな雰囲気で、
「たいした事件も展開もないけど、登場人物をいつまでも眺めていたい」
と思わせるような作品に仕上がっていました。
・「コギト」折伏ぬゐ
⇒ラストがとても良かったです。そして、
そのラストに対応した深い意味のある出だしも良かったです。
「ヒロインが病気で死んで終わり、それで感動」
みたいな安易な作品が溢れるなかで、
こんな最高のハッピーエンドの形があるんだと
世の中に知らしめたい作品でした。
・「先輩と、真実の口」牛髑髏タウン
⇒序盤のツカミが上手すぎ。洗練された構成と
ラスト方面の盛り上がりが素晴らしくて、
長いことこの作品が大賞になると思ってました。
・「哲学の道で少女は思考する故に少女あり」エキセントリクウ
⇒笑いました!劇中小説がとても良かったです。
あんなもの書いておきながら、あの場面で「おれの次回作が読めなくなるぞ!」
と叫ぶ主人公が衝撃的でした。
そんなことを叫ぶことのできる人間がいるというだけで、
「この世界で生きていてもいいんじゃないか」と思えました。
・「けんまほ」ルト
⇒ファンタジーで挑戦した心意気に惚れました。
ああかわいい、かわいいよ、シンリ。
・「虚無の奏でる音楽」野々宮真司
⇒この作品の凄さ、僕(飲茶)はきちんとわかってるからね、
とこっそり著者に言ってあげたい作品。
・「僕と彼女の哲学的おっぱい議論」7GO
⇒展開が秀逸。素直に面白かったと負けを
認めざるを得ない作品でした。
・「祈り屋と衒学者」svaahaa
⇒石動君と二宮さんをもっとみてみたいです。
いっそ、この流れで「サルトルの嘔吐」を萌えラノベとして、
再構成して書き換えてしまえばどうだろうとか、
考えてしまいました。タイトルは「吐きたい背中」で。
・「僕と狂人」やみくろ
⇒哲学女子の王道を抑えつつ、
「起承転結」「どんでん返し」「特殊能力」という
ラノベの王道がきちんと表現されており、作品として
完成されていました。飲茶は高く評価します。
ラストの目録は、にやり、でした。
(続く)