2021年12月31日

【ボツになった漫画原作公開】恋する全知全能

昔書いた哲学漫画原作のネタです。
「全知全能のパラドックス」をテーマに考えた作品です。

<1話>

■岩重巌(いわしげいわお):主人公の男(18)。高卒の一人暮らしのフリーター。貧乏で不運体質。
■チノ:全知全能の謎の少女。

ナレ「人は何のために生きるのか?」
ナレ「人が生きる目的とは何か?」
ナレ「その答えは――『欲望』――そう、人は『欲望を満たすため』に生きている」
ナレ「そして、それゆえに人は『金』を求める」
ナレ「金さえあれば、たいていの欲望は叶えられるからだ」
ナレ「だから、結局のところ、人は金を得るためにその人生を生きているにすぎない」
巌「――のだが、その金がついに尽きた……」
ナレ「岩重巌(18)、フリーター」
《ぼろいワンルームで、残高ゼロの通帳を握りしめながら、プルプルと震えている巌》
巌「生きていくには金がかかる。金は使えば無くなる……ゆえに稼がなければいつかはゼロになる、それが世の理というもの」
巌「とはいえ、誤解しないでほしい。オレは、自堕落に家でゴロゴロ過ごしてたわけでも、ギャンブルに狂って金を費やしたわけでもない」
巌「そう、オレは毎日、一生懸命、真面目に働いていたのだ!」
巌「にもかかわらず――」

《回想開始》
ナレ「三日前」
《工事現場。バイトとして雇われた巌が元気に挨拶する》
巌「今日からお世話になります!岩重です!」
親方「おー、お前か、噂の『商店街の悪魔』は?」
巌「!!」
《びくっと反応する巌》
親方「雇った店が軒並み潰れていく。この街で商売やってるやつで、お前を知らないやつはいないぞ」
《がっはっはと笑う親方》
巌「いや、違うんです!あれは偶然というか」
親方「あー、いいっていいって。もともとあの商店街はさびれてたしな。この不景気なご時世、タイミングが悪かったんだろうさ!」
親方「それより初日に、こうして誰よりも早く現場に来るたぁ、やる気がある証拠。若いのに見込みがあるぞお。もう少ししたら、他の連中が来るからな、それまではそうだな……」
《地面に落ちている一輪の手押し車が親方の目に入る》
親方「あのネコ、かたしといてくれねぇか」
巌「はい!」
巌(変な噂が広がって、門前払いのバイトが多かったけど。親方がいい人で良かった)(これネコって言うんだ)
《手押し車を走って動かしながら、ほくほく顔の巌》
巌「今度こそ、給料日まで仕事を続けて金を!……あっ!」
《巌がつまずき、ぴゅーと手押し車が先の方へ転がっていく。そして、鉄パイプにあたり、それが倒れ、さらに太いパイプに当たり……とピタゴラスイッチの要領でどんどん被害が拡大》
《最終的に、ズズズズズと、基礎工事中の組みあがった鉄骨が崩壊し、しかも鉄骨の一部が巌にむけてふってくる》
巌「ひいいいいい!」
《身をすくめて目をあけると、ぎりぎりのところで鉄骨が当たらず、九死に一生を得る巌》
巌「あぶなっ!……はっ!………あ、あの」
《おそるおそる親方をみる巌》
親方「消えろ、悪魔……」
《怒り心頭の親方》
《回想終わり。巌の自室》

巌「おかしい。確かにオレは、もともと運はない方だった。が、ここ最近はひどい。加速度的に不運の度合いが高まっている気がする」
巌「あー、もー、救いの神でも現れないかなあー」
《そのときピンポンとインターフォンが鳴り響く。はい、とドアを開けると、そこには同い年くらいの女の子が無表情で立っている》
チノ「あなたは全知全能の神を信じますか?」
《無言でバタンとドアを閉めて、カチャリと鍵をかける巌》
巌「いやいや、そういうことじゃないから。(まったく日曜の朝っぱらからついてない)」
《溜息をついて、ドアに背を向ける巌》
チノ「はじめまして。私はチノと言います」
《声がしたので振り返ると、なぜかドアが開いていて、チノが立っている》
巌「ああ、はいはい、チノさんね。いや、ほんとそれどころじゃないんで」
《再び、バタン!と勢いよくドアを閉める巌》
巌(ん?あれ?オレ、さっき鍵、閉めたよな)
巌(この歳で記憶の混乱とかやばいだろ……)
《鍵をかけて、チェーンをかけて。よし、と指差し確認をして、再びドアに背を向ける巌》
《しかし、首元に風を感じる巌》
チノ「あなたは……」
《チノの声がして、まさかと思って振り返ると、やはりドアが開いていて、チノが立っている》
チノ「全知全能の神を信じますか?」
巌(なんだ、これ?夢か?オレは夢を観てるのか?っていうか、貯金ゼロで、今日どう食べるかも困っているときに、変な宗教がらみの超常現象に巻き込まれるとか……次から次へと)
《不条理なことばかりが起きて、精神の限界がきてプチっとキレる巌》
巌「もういい加減にしてくれ!はぁ?全知全能の神?そんな神様がいるんなら、今すぐオレを億万長者にでもしてみろってんだ!」
《怒りのあまり乱暴にドアを閉めて、振り返ることなく、部屋に戻る巌》
《すると、部屋の天井まで積みあがった大量の札束で、部屋のほとんどが埋まっている》
巌「……え!」
《呆然とする巌》
巌「金?……金!?……金っ!!」
巌「え、これ絶対、億は確実にある。いや、何十億?」
《金に目がくらみ、フラフラと吸い込まれるように、前を歩く巌。しかし、ちゃぶ台に足をぶつけて、つっかかる》
巌「うわっ!」
《大量の札束の山に転がり込む巌。ドサドサと山が崩れて、巌を包み込む》
巌「うぶあああっ!苦しい、死、死ぬぅ!」
《札束に圧殺され、口に札束が押し込まれる巌》
巌(おい、なんだこれ……?一文無しのオレが、金に押しつぶされて死ぬ?こんな不運で皮肉な最期……いやだあああああ!)
《気絶する巌》

《時間経過》
巌「うわぁ!」
《目を覚ます巌。はぁはぁと息が荒い》
チノ「大丈夫ですか?」
《巌をのぞき込む、チノ。チノは心配そうに巌を膝枕して介抱していた。》
巌「え?うわっと!」
《顔の近さと、膝枕の状況に驚いて飛びのく巌》
チノ「助けるのが遅れてしまいました。まさか札束に溺れるとは予想もできず」
チノ「全知全能なのにすみません」
《ぺこりと謝るチノ》
巌「うぅ、水……」
《状況が把握できず、頭が混乱状態の巌。フラフラと立ち上がり、水を飲みに行く》
《水道水をごくごくと飲み、顔を洗う巌》
巌(いま何が起きた?あの札束は……オレが玄関にいるうちに、誰かが運んだ?で、オレが気絶してる間にまた運び出した?)
巌「はっ!これが今流行りのYouTuberのドッキリか。『無職のやつを億万長者にしてみた』的な!?」
《ラフェル的なYouTuberの企画を思い出す巌》
巌(いやいや、ありえない。だとしても説明がつかない。認めたくないけど、やっぱり)
巌(オカルト的なやつなんだろうな……)
巌「ごめん、うち、お茶とかないんで……」
《水を入れたコップを片手に戻る巌。チノの目の前のちゃぶ台にコップを置き、話を聞こうと対面に座る》
巌「あの〜、でキミはその……人間なのかな……」《聞きにくそうに》
《しかし、質問に答えず、じっとコップをみているチノ》
チノ「ま、まさか、全知全能の私に、水を……」
《うろたえるチノ》
巌「え!?あ、ごめん、オレほんと金なくて」
巌(うわ、機嫌損ねた!?やっぱ玉露?ブルーマウンテン?ていうか、家に突然来た全知全能に、何出すのが正解なんだよ!?)
チノ「ありがとうございます。いただきます」
《深々と頭を下げ、コップを両手で持ち、こくこくと、いとおしそうに飲むチノ》
チノ「ふぅ」
《飲み終わり恍惚の表情のチノ。つい、それに見惚れる巌》
巌(こんなに水を美味しそうに飲む人、はじめて見た)
巌「喉が渇いてたのかな」
チノ「いえ、予想外の出来事だったので」
巌「えっと、チノさん……だよね。キミはその全知全能で……つまり神さまってこと?」
チノ「神の定義が、全てを知り何でも為せる存在であるなら、そう捉えて良いと思います」
巌(神さま……。はっ、もしかして、あまりに不運なオレに同情して、女神さまが家にやってきたみたいな?)
巌「じゃあ、もしかして頼めば何でもしてくれるとか?」
チノ「はい、何か望みがあれば私に叶えさせてください、なにせ全知全能ですから」
巌(おお!超ラッキーじゃん!もう一度、億って金を出してもらう……)
巌(いや、現金はマズいか。ナンバーから足がついて捕まるオチとか、ありそう。オレ不運だし)
巌(じゃあ宝石、貴金属を出してもらう……でも、それはどうやって換金すればいいんだ?)
《バカそうな顔をして、質屋に金塊と宝石を持ち込む自分。不審がって「もしもし警察ですか?」と裏で電話している質屋の店員。を思い浮かべる》
巌(いざ、何でも願いが叶うとなると、難しいな…)
《そのとき、巌の腹が、ぐぅ〜〜〜となる》

《時間経過》
巌「うまっ!うまっ!」
《質素なちゃぶ台の上に、高級料理のフルコースが並べられている。高級ステーキをばくばくと夢中で食べる巌》
巌「昨日から、水しか飲んでなかったから……ステーキがしみる」
《泣きながら感動する巌》
巌「あの、チノさんは、食べないんですか?(めちゃくちゃ美味しいですよ)」
チノ「はい、私は食物の摂取の必要がありません。全知全能ですので」
巌(じゃあ、排泄もしないのかな。アイドルみたいな設定だな、全知全能)
巌(しっかし、噛まなくても唇できれるし、この肉、ほんと高級だわ、普通に食べにいったらどれくらいの金額なんだろ……)
巌(ん?金額?……対価……代償?)
巌(待てよ、彼女、神さまって言ってたけど、実は悪魔ってパターンもあるぞ)
巌(仮に10億円もらって楽しく生きたって、その代償として、地獄で100万年働かされるとかだったら、割りに合わない!)
《地獄で「残り99万年だ」と言われながら、棒を回す強制労働をしているイメージ》
巌(いやむしろ、最近オレの身の回りで起こる不運は、全部、こいつの仕業で》
巌(無一文にして自分にすがるように仕向けて……)
《「望みをかなえた代償として、魂を頂きます」という悪いチノを思い浮かべる》
巌(あわわわわわ!そりゃそうだ、無償で願い叶えるとかあるわけない)
《やばい可能性に気づいて、ガクガクと震えだす巌》
チノ「満足しましたか?」
巌「え!?」
《食が止まったのをみて、話しかけるチノ》
チノ「では、今度は、私のお願いをきいていただけないでしょうか?」
巌(き、キター!)
巌「あー、やっぱこの願いは無し!ノーカウントで!お金払うから、いや今はないけど、働いて返すから!」
《みっともなくあわてて後ずさりする巌。聞く耳をもたず、立ち上がり、虚空から禍々しいオーラ―に包まれた剣を取り出すチノ》
チノ「私の願いは『命』です」《剣を振りかざしながら》
巌「ひいいいいっ!」
チノ「私の全知全能の力で、あなたの願いを何でも叶えます。だからそのかわり」
チノ「私の命を奪ってください」
巌「え……?ええっ!?」
巌「つまり、それって」
チノ「私を殺してください」
《そう言って、巌に剣を握らせるチノ》
巌「いやいやいや!無理無理無理!」
巌(え、どういうこと。この剣で、この子を刺せってこと?)
巌「いや、あの、何の冗談……だって殺す理由なんか」
《そのとき、ずどん、と地震のような衝撃が部屋を襲う》
チノ「安心してください。気持ちよく殺せるよう、いま、この国を、いえ、この星を破壊してます」
《何も触ることなく、ぶんっと勝手にテレビがつく》
テレビ「ただ今、突然、巨大な隕石が落下し、と、東京が消滅……」
テレビ「さらに複数の隕石が地球に向かって現在も落下中との情報が……みなさん、慌てずパニックにならず、冷静に行動おうぅぇえええ」
《あまりの死傷者の数と、災害規模に半狂乱の顔で中継したアナウンサーが、最後には吐いてしまう》
《そのとき、巌のスマホに、避難警告の緊急事態をつげる警告音が鳴り響く》
警告音「ギュイッ!ギュイッ!ギュイッ!ギュイッ!」
チノ「さあ、早く私を殺さないと、人がもっとたくさん死にますよ」
《人間の命をアリのほどにも感じていないチノの冷たい顔》
巌「はははは、嘘だ。こんなのは、手のこんだ、ドッキリ」
《理解を超えた展開に混乱し、現実を受け入れない巌。しかし、チノは人差し指を一本、天にかかげ、すっと振り下ろす。それと同時に、爆音。爆風でガラスが割れる。窓の向こうに、隕石が落ちて壊滅した街なみが見える》
巌(やっぱり、こいつは悪魔だ)
《現実を認識し、呆然としたあと、殺す決意をして、剣をもって立ち上がる巌》
巌「わかったよ。殺せばいいんだろ。でも、その前になぜオレに殺されたいのか教えろ」
チノ「……わかりました」
チノ「全知全能のパラドックスという言葉を知っていますか?これは、『何でもできる全知全能の神は、持ち上げられない石を生み出せるか』という命題です」
チノ「もし神が『持ち上げられない石』を生み出せたら……もはやその神は全知全能ではない」
《「オレは全知全能だ、この石は持てないけどな!」「じゃあ、全知全能じゃないじゃん」というツッコミの絵》
チノ「しかし、一方、神がその石を生み出せないとしても……やはり全知全能ではなくなる」
《「オレは全知全能だ、でも、そんな石作れないけどな!」「じゃあ、全知全能じゃないじゃん」というツッコミの絵》
チノ「結局、できても、できなくても、ダメ。矛盾が発生する。つまり、この『石』はパラドックスであり、全知全能を殺す存在なのです」
チノ「そして、あなたは、この宇宙に偶然生まれた、そのパラドックスに相当する奇跡的な存在。おそらく、あなたなら私を殺せます」
巌「オレが、パラドックス……?」
チノ「私は全知全能で、宇宙の全てを知ることができますが、唯一あなただけが何をするかわかりません。つまり、あなたはこの宇宙において、全知全能に匹敵する特別な存在……」
巌「意味わかんねえ!いや、オレが特別だとか、パラドックスとか、そんな話はどうでもいいよ!オレが聞きたいのは、なんで殺されたいかって話だ!」
チノ「それは……全知全能がこの世でもっとも不幸なことだからです」
巌「!?」
チノ「私が生み出したこの世界に、かつてニーチェという哲学者がいました。彼は、『永劫回帰』……何度生まれ変わっても、前と同じ人生を永遠に繰り返して生きるだけの運命を『考えうる限りの最大の不幸』だと表現しましたが、この世の全てを知り、全てを為すことができる全知全能の状況は、それに似ています」
巌「わかんねえよ!ハイスぺで何でもできるんだから、幸せだろ」
チノ「いいえ。全知全能は、何でも知り何でも出来るがゆえに、『欲望』がありません。したいことがないのです。楽しいと思えることがないのです。それは……生きていても無意味ということではないでしょうか」
巌「…………そんなのわかんねえよ」
チノ「そうですね。これは全知全能の私にしかわからない気持ちかもしれません」
《決定的なすれ違いが明確になり、チノが冷たい目をする》
チノ「さあ、そろそろ決断をお願いします」
《チノは五本の指を立てて、天にかざす。そして、そのまま振り下ろそうとする》
巌「なんだよ……なんなんだよ。やっぱわかんねえよ!」
チノ「……」
巌「だって、おかしいだろ!楽しいことがないって、なら、なんであのとき、水を嬉しそうに飲んだんだよ!」
《チノの手が止まる》
チノ「それは、生まれてはじめての……予想外の贈り物だったから」
巌「じゃあ、これからも、予想もできない嬉しいこと、楽しいことだってあるかもしれないだろ!」
チノ「!?」
巌「おまえ、オレがパラドックス的な存在だって、何をするのかわからないって言ったよな!なら、オレが全てを知るおまえの予想外のことをすればいい!」
チノ「!!」
巌「オレは全知全能の思い通りにはならない!たとえ、地球が粉々にされたって、お前の望みなんて叶えてやるもんか!」
《吠えながら、剣を投げ捨てる巌》
《しかし窓から投げ捨てた剣が、カン、カンと、跳ね返り、つかの部分でくるりと反転し、ピタゴラスイッチで再び戻ってくる》
巌「え?」
《そして不運にも、その切っ先が、巌の顔へと向かう》
巌「えーっ!ここにきて不運発動!?やばっ、死――」
《目を開けると、剣は巌に刺さっておらず、かわりにチノに刺さっていた。チノが飛びついて巌をかばって、身代わりに刺されていた》
巌「!?」
チノ「本当に予想外な人ですね。こんなに驚いて胸の鼓動が高まったのは、どれくらいぶりでしょう」
巌「チノ!?」
チノ「無事でよかった。ふふふ。短い間でしたが、とても楽しかったです。そして、これでようやく私は……全知全能の罰から解放されるのですね。ありがとう……」
巌「ぐっ!」
《そのまま、二人はもつれて倒れ、その拍子に後頭部を打つ巌。意識が朦朧とする》
巌(これでよかったのか?結果的に地球は救われた?いや、違うだろ!もっとこう、違う結末だってあったはずだ。それなのに、くそう……くそう……!)
《水を渡したときのチノの顔を思い出しながら、そのまま、気を失う巌》

《時間経過。ちゅんちゅんと平穏な音。日差し。布団が惹かれており、そこから目を覚まし、ぼんやりしながらゆっくり起き上がる巌》
《みると、ガラスは割れてない。テレビをつけると、動物園がどうこうの平凡なニュース。一瞬、ぼーっとしたあと、笑い出す巌》
巌「ははははは、なんだよ夢――」
チノ「残念ながら」
チノ「殺す意志もなく、あなたの手から離れた剣では、刺されても死ねないということがわかりました」
《ばっと振り向くと、部屋の隅にチノが座っていた》
チノ「ということで、すみませんがもう少しお付き合いください」
巌「えっ!?」
チノ「わたしを殺すまで、これからも宜しくお願いしますね」(笑顔)
巌「えええー!」
ナレ「こうして、(きっと)世界一不運な僕と、(おそらく)宇宙一ハイスペな全知全能との、奇妙な生活が始まったのだった」




posted by 飲茶 | Comment(1) | 哲学メモ

2021年10月29日

ニコニコチャンネル開設!

このたびニコニコチャンネルを開設しました!
いっぱい話したいと思います!

「飲茶の史上最強の哲学ラジオ」

posted by 飲茶 | Comment(0) | 哲学メモ

2021年10月11日

哲学メモ:哲学の神髄

「哲学にとって、その結論(つまり思想)に賛成できるか否かは、実はどうでもよいことなのである。
重要なことはむしろ、問題をその真髄において共有できるか否か、にある。

優れた哲学者 とは、すでに知られている問題に、新しい答えを出した人ではない。これまで誰も、問題があることに気づかなかった領域に、実は問題があることを最初に発見し、 最初にそれにこだわり続けた人なのである。

本格的な哲学説に関して、それをその真髄において批判したり乗り越えたりすることは、 実は不可能なことなのである。なぜなら、問題を共有してしまえば、もはやその問題を超えることはできず、それができると感じる人は、そもそも問題を共有していない(「別の世界に住んでいる」)人だからである。本当に理解できたならもう決して超えることができない――ここに哲学というものの素晴らしさと恐ろしさがある」
永井均『ウィトゲンシュタイン入門』

哲学の神髄はここにあると思う。

パラドックスがあると、人は答えを求めたがるが、真に大事なのは「それらの問題がいかに不可能であるかを思い知ること(問題の困難さを正しく理解すること)」である。

「無のパラドックス」や「アキレスと亀のパラドックス」や「現象報告のパラドックス」などなど。
世界は「本当に理解できたならもう決して超えることができない」ような問題に溢れている。

「世界に隠されているパラドックス(矛盾)に気づくこと」
これを「哲学の定義(=哲学者に求められる唯一の素養)」だと言っても良いだろう。


・難しい問題を解決するのが哲学者の仕事だと思われがちだが、むしろ解決不可能な問題をわざわざ見つけ出して、「ほら解決できないだろ?世界(人間)は本来こうできているんだよ!」と突きつけるのが哲学者の真の仕事なのである。(答えを出すことはそれほど重要ではない)
posted by 飲茶 | Comment(2) | 哲学メモ

2021年09月21日

哲学メモ:「無」こそが哲学の核心である。

■「無」こそが哲学の核心である。

パルメニデス「あるものはある、無いものは無い」
パルメニデス「無は知ることもできないし語ることもできない」

・上記のパルメニデスの発言が、哲学の「核心」だと思う。

・ここで言う「無」は、我々が日常的にイメージしている「無い」とは違うものである。
・ここで言う「無」は、真に「無い」のだから、(その定義上)我々は想像することもできない。

・たとえば、「全てがまったく無い状態を想像してください」と言ったとする。おそらくあなたは「真っ暗闇の何もない空間」を思い浮かべるだろう。しかし、それは「無」ではない。だってそのイメージでは「空間」が『ある』からだ。何かが『ある』のだから、それは『無』とは言えない。

・真の「無」というのは、「何もない空間」すらも「無くてはならない」。
・しかし、我々は、「空間が無い状態」を思い浮かべることも想像することもできない。
※カントも同じことを言っている。

■無のパラドックス

・しかし、にもかからわず、この真の「無」というのを、我々は「わかる」ような気もする。
実際、我々は「わかる」ような気がするから「何もない空間って真の無とは違うよね」と語れるのだ。

・パルメニデスが主張するように本来「真の無」は考えることも語ることもできない。
・にもかからわず「これこれは『真の無』とは違うよね」と考えたり語れてしまう矛盾。
・これを「パルメニデスのパラドックス」または「無のパラドックス」と名付けよう。
・実はこのパラドックスこそが、すべての哲学的問題に関わっており、哲学の核心なのだ。


posted by 飲茶 | Comment(1) | 哲学メモ

2021年04月26日

配信チャンネル開始しました

東浩紀さんがはじめた配信プラットフォームのシラスで、配信をしています。
生で、哲学について語っています。宜しければご視聴お願いします^^

シラス「飲茶の史上最強の哲学」
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2019年08月13日

最新刊報告

[NEWS] やわらかスピリッツで〇〇Tuber漫画の連載開始!


[NEWS] 初小説! 30人の幼児と娘、どっちを助ける?



[NEWS] なぜか虫食漫画を作りました!むしくい姉(ねえ)!



[NEWS] 14歳からの哲学入門 ポプテピピック表紙で文庫化

ポプ子とピピ美が14歳ということで、コラボが実現しました!
個人的には『史上最強の哲学入門』以上の自信作です。


[NEWS] 最強のニーチェ 0円でオーディオブック化

今なら0円でオーディオブックとして聞けます!
期間限定なので、お早めに!
対話形式の本なので、飲茶がイケボで、女の子に哲学を解説しています。


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2019年05月31日

身体逆転のパラドックス

たとえば、こんな生物がいたとする。

逆転.png

(1)感覚器官
 有害な物質があることを感知して電気を流す。

(2)脳
 外部からの電気信号を元に判断し、駆動系を動かすボタンを押す。

(3)駆動系(足)
 ボタンが押されると、後ろに進む足。

さて、こういう構成であるため、この生物は、危険な有害物質が目の前に置かれると、大慌てで逃げ出す行動をとるわけだが……、このとき、こいつの脳(心)が「怖い」などの意識的な体験(クオリオ)を感じていたとする。

では、ここでいきなり外科手術をして、まったく真逆な新しい「感覚器官、駆動系」につけかえたとする。

(1)新感覚器官
 「有益な物質」があることを感知して電気を流す。
(3)新駆動系(足)
 ボタンが押されると、「前に」進む足。

すると、この生物は、有益な物質があると、大慌てでその物質に向かうようになるわけであるが……、ここで着目すべきところは、「脳は何も変わっていない(元のままでも機能する)」ということだ。
そう、脳を入れ替えなくても、この生物の行動は成り立つのである。

であるならば、「身体の機能を逆転させたあとの、この生物の脳」は、「怖い」という意識的体験(クオリオ)を感じているのだろうか?
それとも「嬉しい」という意識的体験(クオリオ)を感じているのだろうか?

物理的に同じ脳が、同じように動作しているのに、「意識的な体験(クオリア)が異なる」ってどういうこと???

このことからわかることは、
脳がどんな情報処理をしていようと、その処理の「意味付け」は接続されている身体の機能によって変わる
のだから、「脳単体で、クオリアが生じる」ということはありえないのではないか、ということ。

※しかしだからといって、「クオリア(心)の発生には、身体が必要なんだ」と単純に言うつもりもない。ここでは話さないが、それもいくらでも否定ができる。

僕は、この問題を「身体逆転のパラドックス」と呼ぼうと思います。

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2019年04月09日

東浩紀『動物化するポストモダン』の要約

哲学サロンで読書会をやってます。以下は、そのときの資料の一部。

・ポストモダンとは → 1970年代以降の世界のこと
 
・哲学者コジェーヴの説
 →ポストモダンの世界は、「動物化」するか「スノッブ化」するかの二択だ。
 
・動物と人間の違い
 →動物は欲望を満たすのに他者は不要(欲求を満たして終わり)。
 →人間は欲望を満たすのに他者が必要(他人に嫉妬されたい)。
 
・動物化とは
 →人間が、上記の動物みたいになること。
・スノッブとは
 →知識人気取り。ええかっこしい。斜に構えて愚痴ばかり呟くTwitter民。

ゆえに、『動物化するポストモダン』とは、
『1970年代以降の世界は、無意味に即物的に要求を満たすだけの
 動物みたい人間が増えてきたよねー』みたいな内容。
 
・シミュラークルとは
 →模造品。二次創作。をカッコよく言っただけ。
 
・大きな物語とは
 →宗教とか、理想の政治思想とか、生きる目的とか、みんなが信じるべき物語のこと。
 東西冷戦(理想の政治を求める米ソ対立)の崩壊で「大きな物語」はなくなった。
 
・大きな物語について大塚の説
 →現実で「大きな物語」が崩壊したので、みんな、それをサブカルチャーでねつ造した。ガンダムで例えると、その世界観や設定が「大きな物語」で、アニメシリーズやガンプラが「小さな物語」。みんな「小さな物語」を消費して、背後にある「大きな物語」に触れようとする。この行動を「物語消費」と呼ぶ。
 
・ガンダムの時代
 →ガンダムは「大きな物語」の崩壊に立ち会った世代のコンテンツ。だから、ガンダムの設定には「オールドタイプとニュータイプの対立」とか「宇宙世紀という年表」など、社会的なテーマがちゃんとあった。
 
・エヴァンゲリオンの台頭
 →「大きな物語」がないのが当たり前の世代のコンテンツ。みんな背後にある設定なんてどうでもよくて、ただ綾波萌え。EVAっぽい、思わせぶりな設定でノれればOK。原作者すらパロディやりまくり。複雑で雑多な設定はあるけど、実は特に意味がない(ガフの部屋って何だよ!)。こうした、一貫したテーマやストーリー性のない雑多な世界設定の集まりのような作品(エヴァンゲリオン)を、東浩紀は「大きな非物語」と読んだ。
 
・デジキャラット(萌えアニメ)の台頭
 →萌える記号の組合せで作られる作品。猫耳+メイド+ツンデレ。もはや「大きな物語」は存在しない。

・東浩紀の説
 →データベースに入ってる設定や萌え要素を自由に取り出し、模造品(組合せのキャラ)を創作してるのだから、今の時代は「物語消費」ではなく、「データベース消費」と呼ぶべきだ。
 ※ここで言う、データベースは「過去のアニメの資産(歴史)」だと単純に考えるといいかも。ようするに、「過去に売れた作品を適当に組み合わせた、気持ちよくなれるだけのテーマ性のない作品」を次々と生み出しては消費する……そういうオタクどもがたくさん現れたぞ、というお話。
 
・したがって、オタクの行動原理は、薬物中毒みたいなもの。自分が気持ちよくなる記号の組合せを取り出して、個人的な欲求を得るだけ。ゆえに、現代のオタクは動物化したと言える。
 
結論。現代社会(ポストモダン)は
「データベースとシミュラークル」を消費する時代であり、
(つまり、「過去の資産の組み合わせで作られた、2次創作みたいな萌えアニメ」
を消費する時代であり、)
人間は、データベースの記号を漁るだけの動物になってしまった時代である。

時に、大きな非物語について語り合う人(EVAについて語り合う人)もいるが、
イデオロギー(思想)を共有して会話してるわけではなく
、いつでもやめられるので、それは「ただの、形式的で擬似的な人間関係」でしかない。

→ゆえに、ポストモダン(1970年)以降、世界はただ即物的に、だれの生にも意味を与えることなく漂っているだけである。
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